インタビュー:サイクリスト能勢 謙介 様
レベルは違いますが、自分の身体には頼れないシビアな状況に常に置かれているという点で、トップアスリートと1型糖尿病患者はかなり似ているのではないかと思います。
2018 |
加須こいのぼり杯(利根川タイムトライアル)(登録C:21分42 秒33・13位) |
おおつち新井山高原ヒルクライム(53分16秒・男子D 13位) | |
Mt.富士ヒルクライム(1時間30分46秒・男子45~49歳506位) |
2018 |
ツール・ド・東北(南三陸フォンド・170km) |
糖尿病があっても運動をされる方が多くいらっしゃいます。能勢さんご自身も1型糖尿病を持病にお持ちだとお聞きしました。
私は17歳の時に1型糖尿病を発症しました。1型糖尿病はひとことで言うと「膵臓からインスリンが出なくなる」という病気です。その足りなくなった分のインスリンを足してやりさえすれば、普通の方とほぼ同じ生活ができます。ただ、その調整はそれほど簡単なものではありません。
1型糖尿病はインスリンを注射で打っているので、予想外のことが起きた時には低血糖の危険性が常にあります。医療従事者としては安全を考えますから、「積極的にどんどん運動しなさい」とはあまり勧めません。それでもどうしてもやりたい人は、医師と相談したり、あるいは医師に黙って勝手にやっているのだと思います(笑)。
最近は、チーム・ノボ・ノルディスクの影響だと思いますが、1型糖尿病でも自転車に乗る方を見かけるようになりました。これはノボ・ノルディスク・ファーマというデンマークのインスリンメーカーが、プロツアーのチームをスポンサードしているんです。1型糖尿病の選手ばかりを集めたチームをつくって、2020年にツール・ド・フランスに出場することを目標に活動しています。
自転車を始めたのはどのようなきっかけだったのでしょうか。
私が自転車と出会ったのは37歳の時です。学生の時には一切運動をしていなくて、いわゆる「万年文化系」でした。スポーツとはまったく無縁だったのですが、会社の所属部署が変わって、勤務時間が短くなったことで余裕ができ、会社も近かったので、自転車通勤を始めたのがきっかけです。ホームセンターで売っているモトクロスバイクを買ってきて、片道7キロを週に3〜4日、自転車で通勤し始めました。そうやってしばらく通勤していると、太もものかたちが変わってきたんです。通勤程度の運動でも身体が変わってきたことを目の当たりにして、運動すると身体に影響があるのだということを初めて実感しました。その冬には、ボーナスでロードレーサーを買うほどハマっていきます。その後勤務場所がまた変わって片道が11キロになり、だんだん地足もついてきた形です。
自転車に乗っている友人に、鈴鹿サーキットでやるエンデューロレースに出るから写真を撮りに来てほしいと頼まれたことがありました。私は最終コーナーのシケインの登り口のところに立って撮っていたのですが、皆さん意外に遅かったんです(自動車レースとは逆で、自転車レースでは反時計回り)。それを見て、「ロードレーサーに乗っていてこんなに遅いのなら自分でもいけるのでは?」と思いました。来年は自分がレースに出てみようと、そこから本格的にトレーニングを始め、翌年には実際に出場を果たしました。4時間走れるだけ走って、走った周回数で順位が出るというレースでした。結果は120キロ21周走って、430人中上位100位くらいの成績でした。参加者は健常者ばかりの中、インスリンが出ていなくてもこれだけ走れるのかと思い、病気があってもやればある程度できるのだと、そこからだんだんのめり込んでいくことになります。ただ、着順を争うレースだと落車や事故もあるので、ヒルクライムや平地のタイムトライアルなどに特化して取り組んでいます。
37歳で自転車を始めたので、もう少し早く出会っていれば…という思いもあるのですが、それまでスポーツを一切やってこなかったので、最初はすごく伸びました。やり始めの2〜3年はパフォーマンスが伸びる一方だったので、本当に面白かったですね。
糖尿病と運動の関係について教えていただけますか。
本来、普通の食事をして、普通の日常生活を送っていれば、 1型糖尿病になったとしても、インスリンだけ打っておけば、特に運動をしなくても問題はないはずです。しかし、そもそも現代の日本人は運動量自体が減ってきているため、普通の生活を送っているだけで代謝障害が起きてしまうのです。
戦後一貫して日本人の摂取カロリーが減ってきている中、2000年までは脂質の摂取量は増えていたのが、2000年以降は糖質も脂質も減っているそうです。それなのに、2型糖尿病は増えています。この増加曲線と一致しているのが、自動車の普及率だと言われています。要するに、「身体を動かしていない」ということです。総摂取エネルギーが減っている以上に、消費エネルギーが減っているのです。いま日本で2型糖尿病が増えているのは、これが理由だと言われています。
人間は、身体を動かして、全身に血液と酸素を回して、それで初めて健常な状態が維持できるようにできています。それをやらないとどんどんおかしくなっていきます。平均的な日本人は、特に地方では自動車に乗ることも多く、運動量が足りません。私も、自転車で走るようになってはじめて、今まで自分の身体を動かしていなかったことに気づきました。現代の日本でごく普通の生活をしていたら、自分の今の状態が生物として問題があるとは意識しないものです。
もちろん、経口薬を飲んだり、食事制限をすれば、血糖値は正常化されます。しかし、運動量が減ると、確実に筋肉が落ちてしまいます。筋肉が落ちてしまうと、糖を取り込むための器官がなくなり、ますます血糖が下がりにくく、逆に上がりやすい身体になっていきます。ですから、2型糖尿病の方には何よりもまず筋肉を付けてくださいとお話ししています。筋肉をつけて糖を消費する身体をつくれば、代謝が良くなって、少ない糖質で効率よくエネルギーを使う体質になっていきます。つまり、血と酸素を全身に回すこと、代謝を良くすることが大事なのです。
代謝を上げるためには、エネルギーとして糖質が必要です。脂質はエネルギーとしてすぐに引き出すことはできないので、燃焼させる糖質が欠乏していると身体は動きません。アミノ酸を含んだスポーツドリンクなどを入れてやることで、脂肪をうまく分解してエネルギーとして使うこともできますが、そういった補助剤を入れないと、効率よく脂肪を使うことはなかなかできません。
運動をするうえで栄養補給が大事だということですね。
おもしろいことに、1型糖尿病とシリアスなアスリートは考え方の点で似ている部分があります。もちろんレベルは違いますが、シビアな状況に置かれたときに自分の身体に頼れないという点で、トップアスリートと1型糖尿病患者はかなり似ている気がします。我々は自分の膵臓は使えないので、外から何を入れて対応するかを常に考えます。これはアスリートも同じです。彼らも自分の身体には頼れないギリギリの領域で勝負をしているので、シビアにいろいろなものを選んで使いますよね。そこまで突き詰めてやっている方ばかりではありませんが、糖尿病を持ちつついろいろと考えてやっている方の体験や考え方は、健常者の方がシビアな状況に置かれたときの対処の参考になるのではないでしょうか。もう身体に頼れない極限状況のときにはこんなやり方でフォローができる、というアドバイスはできると思います。
血糖値とマルトデキストリンは、どのようなバランスで調整されているのでしょうか。
1型糖尿病患者は、基本的にインスリン注射を打って血糖値をコントロールします。ただし、運動するときにいつもと同じインスリンの打ち方をしてしまうと、インスリンが効きすぎて低血糖になってしまいます。なので、糖質を入れてそれを上げるか、もしくはインスリンを減らして下がらないようにしないといけません。血糖を急に上げてしまうと、その補正のためジグザグになってしまうので、じわじわと上げてくれる材料が必要になります。いろいろと最適のアイテムを探し求め、友だちにも教えてもらって、それで今のマルトデキストリンに行き着きました。
1型糖尿病の低血糖を仔細に分けると、2つの状態があります。血糖68mg/dlを切った状態を低血糖といいますが、この状態ではまだ脳神経はちゃんと動作しています。ただ、その値からはアドレナリンが出るようになります。たとえば、短距離・短時間の高強度の運動をするとアドレナリンが出ます。アドレナリンは肝臓から糖新生を促すので、血糖が上がります。1時間くらいに凝縮して高強度の運動をするのであれば、補給はあまり必要ありません。しかし、それ以上続けて長時間運動をすると、あとは筋肉がエネルギーをどんどん消費するので下がっていく一方です。それに対しての手当がぜったいに必要です。それを超えて落ちていくと、脳や神経が正常に動作しなくなり、最後は意識障害で倒れてしまいます。それがいわゆる「低血糖で倒れる」ということです。
幸いにも、自分の場合今まで意識障害で倒れたことはありませんが、危ないことはありました。注射の打ちすぎや運動のしすぎで血糖が下がってきたら、ブドウ糖を使って上げるしかありません。ガツッと上げたい時にはマルトデキストリンでは追いつかないのです。なので、計画的にじわじわ上げたいときにはマルトデキストリン、緊急ですぐに上げたいときにはブドウ糖という使い分けをしています。私は自転車に乗るときにも、緊急用にブドウ糖を備えています。我々は身体一つだけではどうしようもありませんから、何があっても大丈夫なように、常にデバイスを持って備えています。逆に、そういったバックアップを二重三重にとっておけば、たいていのことには対応できます。
最初はやはりかなり試行錯誤しました。走りに行くときは注射の量を減らし、補給を厚めに摂るなど、経験則として蓄積されていき、それでやっとつじつまが合うようになってきました。今でこそ、100キロ走りに行こうとなっても普通に行って帰ってこられます。しかし、インスリン注射が必須で、それまで自転車でそんなに走ったことがない方だったらぜったいに無理です。やっぱり積み重ねですよね。身体の慣れ、ノウハウの蓄積、そこにマルトデキストリンのような便利なツールが加わって、ようやく人並みに走れるようになりました。
一般生活をされている方が運動をする場合でも、何か気をつけたほうがいいことはありますか。
普通の方でも、糖質を取らずに長時間の有酸素運動をしていると、いわゆるハンガーノック(シャリバテ)、を起こしてしまいます。要するに低血糖ですね。普通の方であればインスリンの分泌が抑制され、糖新生が生じるなど、自分の代謝過程の中である程度カバーできますが、筋グリコーゲン、肝臓グリコーゲンも全部使ってしまうと、ハンガーノックになるしかありません。身体の中でグリコーゲンを保持できるのは、肝臓が60%くらい、筋肉が40%くらいです。それを使い尽くしてしまうと、自分ではリカバリーできません。そうなる前に外からエネルギーを入れてやって、身体の緊急用のエネルギーは使わないようにしたほうが、身体への負担は少なくなります。
また、何も運動しなくても、8〜10時間絶食するような状況に置かれるとハンガーノックになります。いわゆる「目が回る」、「星が飛ぶ」という感覚です。最初に視覚神経に影響が出てきているので、本当に目がチカチカしてくるんです。
ですから、長時間の有酸素運動をするのであれば、やはり糖質と電解質を入れることが必須です。塩(ナトリウム)、マグネシウムなどを一緒に取ることが大事です。その昔、鉄工所で働く方が塩や梅干しを摂りながら作業をしていたのも、電解質が大事だということを経験則的にわかっていたのだと思います。
実際に粉飴をどのようにお使いですか。
2010年頃、レースで長距離を走り始めた頃からマルトデキストリンを使っています。粉飴は、マルトデキストリンで探していて見つけました。粉飴はそんなに甘くないですし、口当たりもすごく良いですし、水に大量に溶けます。析出することもないですし、きれいに均質に解けるので非常に飲みやすいですね。
たとえば100キロ走るとしたら、最初に血糖を上げておき、走り始めて1時間後からはどんどん糖質を入れていきます。ボトルの中に粉飴50〜100グラム、塩、アミノ酸、芍薬甘草湯を入れて、自分用のドリンクを作っています。100キロを超えるときは、出先でスポーツドリンクを調達します。
スポーツドリンクで補う場合は、用途、時間、運動の強度によって選ぶことが大切です。汗をかくだけであれば、糖質が入っていなくて電解質が入っているもの。汗をかくだけではなく身体を動かすのであれば、糖質と電解質の両方が入っているものを取らないといけません。粉飴であれば、自分で自由に糖質量をコントロールできます。そういう意味で非常におすすめです。粉飴を上手く使えば、有酸素運動でのパフォーマンスは必ず上がると思います。
自転車を始めて変化はありましたか。
私は37歳で自転車を始めましたが、何もしていなかったら、今はもっと老けていたと思います。老化はけっきょく「酸化」と「糖化」です。身体が酸化していき、糖と細胞の不可逆な結合が進んでいくのが老化です。身体を動かしてやることで、筋破壊などの細胞の破壊が起こり、古い細胞がどんどん廃棄され、新しい細胞が作られます。それで代謝が上がっていく。もしくは、酸素を大量に供給するので、栄養が入り、老廃物も出ていく。それによって初めて健康な状態が維持できるのだと思います。
やってみてわかったこともいろいろあります。自信もつきました。自分の物理限界を知ることで、何かあってもデバイスさえあれば普通の人についていけると思うようになりました。
今年のご予定をお聞かせください。
春に利根川のタイムトライアルに出て、その後は新山おおつちヒルクライム、富士のヒルクライムなどに出ました。9月にはツール・ド・東北があって、復興支援のようなかたちで三陸の沿岸部を走ります。1日で170キロ程度走る予定ですが、半日掛けて走るので大丈夫です。もちろん安心して走れるのはマルトデキストリンがあるからこそ、ではありますが。
そして実は、去年から登山も始めました。今年もいろいろな山を縦走する予定です。ここでもやはりマルトデキストリンのお世話になっていますね。どうやら、一旦やり始めたら止まらなくなる性格のようなので(笑)。
能勢さんのお話は、糖尿病(特に1型糖尿病)の方が運動をする上で大変参考になると思います。また、一般の方も学ぶべき内容も多く、勉強になりました。貴重なお話しをしていただき、ありがとうございました。
インタビュー:サイクリスト野崎 鉄雄 様
自転車と出会ったからこそ今がある。今年はマウンテンバイクのレースにも挑戦します。
2018 |
9月 富士チャレンジ |
11月 ツール・ド・おきなわ |
自転車競技には多くの種目がありますが、野崎さんはどの競技をされていますか。
ロードレースが中心で、もう30年を超えています。最近は仕事の関係であまり出場できていないのですが、出ているときは年に10回くらい大会に出場します。距離は様々で、短いものから、毎年11月にある沖縄のレースでは210キロに出ています。自転車にはシーズンオフがなく年中大会があるので、通すと、月に1回くらいになりますね。
210キロのロードレースともなると、準備は大変です。
最近、これも自転車競技なのですが、マウンテンバイクやシクロクロスを始めました。シクロクロスというのは、山の中のようなアップダウンがあるところを、ときには自転車を担いで階段を上ったりするような競技です。マウンテンバイクやシクロクロスは、30分、40分くらいの短距離のレースです。
保有されているバイクも相当な数になりますね。
競技に合わせてバイクは8台くらい、もっとあるかもしれません。部屋がいっぱいです。ロードレースをはじめ、トラック、タイムトライアル、マウンテンもあればシクロクロスもあります。
練習はどのようにされていますか。
練習は毎週です。週末、所属しているチームのメンバーや近くに住んでいる自転車の知り合いなど、仲間と一緒に丹沢や伊豆方面に走りに行っています。以前練馬に住んでいた頃は、所沢から秩父のほうまで走っていました。
もともと、1990年に知り合い5〜6人で自転車競技のチームを作りました。最初は近くで練習していた仲間が中心でしたが、今では50〜60人に増えています。当時は練馬に住んでいて、所沢あたりでよく走っていました。実は、一緒にチームを作った仲間の中に、私の中学のときの先生がいたんです。大塚和平先生といって自転車では有名な方です。私が中学生の頃に、先生は新卒くらいでした。先生が自転車をやっているのは知っていたのですが、その後レース会場でたまたま出会って、今度一緒に練習しようという話になりました。
あとは、通勤時間を練習に充てています。今は勤務先が近くなって通勤時間はそんなに長くないのですが、以前は練馬から海老名まで、週に3〜4日は片道45キロくらいを自転車で通っていました。
練習時間を取れないとレースは走れません。練習時間が取れずに思ったよりも走り込めなかったようなときは、当然、走れないし結果も出ません。沖縄の210キロのレースに出ようと思ったら、2カ月間みっちりやります。11月の大会に向けて、8月くらいから沖縄をターゲットにした練習を始めます。練習が不足しているときは、レースのスタート時点でわかるものです。今年はあまり走れなかったなと。逆に、成功したときは練習も上手にいったときです。
粉飴とはどのように出会われたのでしょうか。お使いになって、どんなところが良いと思われましたか。
粉飴を知ったのは5年くらい前です。最初はボディビルダーが使う商品を使っていました。その後、たまたまネットで粉飴を見つけました。内容を見たら、他社製品と同じじゃないかと。成分が同じマルトデキストリンで、よく売っているゼリー等ともほぼ変わりません。それなのに値段は半額以下でした。使ってみたら味も同じです。他社製品はフレーバー付きのものがあったのですが、粉飴も溶かすものによって味がつけられます。それから粉飴に変えました。
粉飴にした一番の理由はコストパフォーマンスが良いところです。練習にも同じ補給食を持っていくとなるとお金もかかります。週末2日ずつ練習すれば、1カ月で8回ですから。
それに、濃さ、粘度を自分で自由につくれるところがいいですね。粉飴を多く入れればドロドロになるし、少なくすれば液体に近くなります。小さく凝縮すれば1つのボトルでカロリーを多く取ることができます。ただし、あまり凝縮してしまうと濃すぎて吸いにくくなってしまいますので、濃さはだいたい同じにしています。粉飴何グラムに対して、水やジュースなどの割るものを何CCにするか。いろいろやって一番良い比率を探しました。
味もいろいろと変えています。レシピはオリジナルです。レモン果汁で作ったすっぱめのものや、ジュースで作った甘めのものなど、同じ粉飴でも味を変えて作っています。
粉飴は炭水化物が直に入ってくるので、レース中でも練習中でも、摂取すると力が残る感覚があります。
レースやトレーニングでの栄養補給はどのようにされていますか。
補給は、トレーニングでもレースでも同じものを使います。実際に使うものを練習から使っておくのです。たとえば、50キロくらいの短い距離のレースであれば、飲みやすいように薄くして自転車のボトルの中に入れておきます。当然、ターゲットにしているレース前の練習でも同じものを使います。沖縄の210キロレースであれば、エネルギーを取らなければ走れません。何キロカロリー取ればいいのか計算して、持っていく準備をします。6時間くらいかかるレースなので、練習のときにも同じようなものを持って6時間走ります。
たとえば沖縄のレースでは、3000〜4000キロカロリーくらいポケットに入れておきました。粉飴だけでは飽きてしまうので固形物も持っていきます。そうして持っていったのに、レースが終わってみて食べ残しが多いときはやはりだめですね。本当は全部食べないといけないのでしょうね。
あまり疲れていないときは固形物でも食べられるのですが、後半になって疲れてくると固形物は食べづらくなります。そういうときには粉飴で自作したものを飲みます。味は1種類だけではなく何種類か用意しておきます。味を変えないと飽きてきてしまうんです。それもぶっつけ本番ではまずいので、練習のときからいろいろな味を作ってやっています。
補給は、いかに、どこで、どう取るかが大切なポイントです。ロードレースでは平地も走るし、山も登ります。山を登る前に固形物を取ると到達しきれないので、なるべく胃の中に固形物を残さない状態で入っていかないとなりません。ジェル状であれば大丈夫です。あと30分で山に入るようなときは、固形物はなるべく取らないようにしています。
あとは、長いレースの前はスタートの2〜3時間前に食事を取って、スタートの時には胃を空っぽにしておきます。その後、走りながら少しずつ食べたり、水を飲んだりします。
普段の食生活も含めて、栄養について気をつけていることはありますか。
脂肪を増やさないということは、当然考えます。上りのレースになると、体重が多いと走れないですから身体を絞ります。とにかく走り込んで、体調管理をしながら絞っていくこと。これしかないですね。
野崎さんにとっての自転車を一言でいうとどうなるでしょうか。
30年前に自転車を知らなければ、全然違う人生だったのかなと思います。自転車と出会ったからこそ、今があるのかなと思っています。
週末といえば、時間があれば自転車に乗っていますので、自転車をやっていなかったら何をしていたのだろうと思います。まったく想像がつかないですね。
自転車で仲間も増えました。チームのメンバーもそうですが、自転車は、下は中学生くらいから上は80歳くらいまで、たくさんの人がいます。そういう人たちと一緒に走ったりできる、繋がることができます。また、レース会場で全国各地の人たちと知り合えるので、全国に自転車の知り合いがけっこうできました。同じレースに出て、争って、レースが終わればお疲れ様でしたと話をする。仲間が非常に増えました。
今後のご予定をお聞かせください。
次は、9月の中旬くらいにマウンテンバイクのレースに初めて出場する予定です。マウンテンを始めたのは最近なので、レースも初めてです。長野県で開催されるレースで、山の中の砂利道のアップダウンを100キロ走ります。速い人で6時間くらいかかるレースなので、当然、その時には粉飴を作って持っていかないと走れません。
自転車歴30年の大ベテランである野崎さんですが、最近は新しい競技にも挑戦されています。野崎さんの挑戦を心より応援いたします。本日はありがとうございました。
インタビュー:サイクリスト飛田 俊彦 様
1型糖尿病だからといってとくにハンデは感じていません。今年は「ツール・ド・北海道」の総合優勝を狙っています。
2018 |
つくば 9極の9耐 100kmチャレンジ優勝 |
ツール・ド・かつらお LOWクラス 第2、第3ステージ優勝、総合優勝 | |
ツール・ド・宮古島 総合7位 年代別優勝 | |
2017 | JCRC第3戦群馬 SAクラス優勝 |
2016 | ツール・ド・おきなわ 市民140km 10位 |
2014 | ツール・ド・北海道 市民A第2ステージ優勝 |
飛田さんは1型糖尿病を持病にお持ちだとお聞きしました。
14歳のときに1型糖尿病を発症しました。当然、当時は「なんで?」と思いましたが、子どものうちになったからか、慣れてしまって普通に生活できています。
1型糖尿病はインスリンが膵臓から出なくなってしまう病気です。私はベテランになってしまって、歯磨きと同じように注射も打っています。運動をやれているおかげでコントロールもうまくできています。「糖尿病なんです」と言うとビックリされますね。
食事も、夜ご飯だけはタンパク質・野菜中心にしていますが、朝ご飯と昼ご飯には普通に糖質を取っています。ケーキもアイスも食べられます。積極的には飲まないのですが、シーズンオフは、飲み会に行ってみんなと同じように食べて飲んでいます。太ったら元も子もないので多少は調整していますし、健康的な生活にしていますが、だからといって美味しいものを我慢することはありません。
スポーツでも、カロリーを消費したら粉飴を取って同じようにバランスを取る。それだけのことです。だから、私は1型糖尿病だからといってとくにハンデは感じていません。むしろ感謝しているくらいです(笑)。
しかし、大変なこともありました。インスリンはドーピング剤に当たるんです。多く打ったら太るし、良い事はないのですがホルモン剤ですからね。私は全日本選手権に2回出ていて、1回目のときはそんなことはなかったのですが、去年の大会に出るにあたってドーピングの規則が厳しくなっていました。それで主治医の先生と相談して、何度もやりとりしなくてはならず大変でした。日本の糖尿病患者でそんな経験をした人はまだ他にいないと思います(笑)。
糖尿病の方は普段から疲れやすいというイメージがあったのですが、糖尿病の方がスポーツをするのはなぜよいのでしょうか。
1型糖尿病はインスリンが膵臓から出なくなってしまう病気です。2型はインスリンが出にくくなります。2型の人たちはお腹に脂肪がついていたり、太っていたりします。たき火で考えると、これは薪がしめっているようなものです。インスリンが着火剤です。私の場合、もちろん注射もありますが、スポーツをしているおかげで着火剤がすごく少なくて済んでいます。つまり、運動によって燃えやすい身体になっているのです。だから、運動をやめて脂肪がついてしまうとまずいですね。相当気をつけないといけません。脂肪がついている人、2型糖尿病になってしまった人、生活習慣病の人はそもそも薪が湿っていて燃えづらいので、いくら着火剤を使っても火がつかないんです。さらに、着火剤を大量に使っていると、膵臓が疲れてしまって出にくくなります。
だから、1型糖尿病で運動していないと大変だと思いますね。ただし、できない場合もあります。特に最初のうちはコントロールがうまくいきません。私は完全に安定飛行に入っていますが、それでも体調によってはミスをすることがあります。注射を打っているのに、ご飯の量が少なかったり、運動しすぎて低血糖になることがあります。低血糖はとても危ないものです。そんな経験を繰り返すうち、バランスを取らないで、運動を完全にしないようにして低血糖を起こさないほうがいいと思う人もいるようです。でも、それでは本末転倒ですよね。薬もどんどん良くなっているから、なおさら何とでもなりますし。
1型糖尿病が特に疲れやすいというイメージは、私に関してはよくわかりません。スポーツをしているおかげ、というのはもちろんあります。やめたら糖尿病が悪化すると思います。ですから、2型の人こそスポーツをやるべきではないでしょうか。自分でインスリンを出す力がまだ残っているわけですから。
粉飴はマルトデキストリンという糖分なのですが、現在、どのようにお使いですか。どんなところが良いでしょうか。
粉飴には大きなポテンシャルがあります。私たちのようなサイクリストは、吸収が良くて手軽にパッと取れるものがいいんです。私が出るレースは長くて140キロくらいですが、固形物を食べずにほぼジェルで補給しています。昔は市販のジェルを使っていましたが、4〜5年前に粉飴の粉タイプを知って自分で作るようになってからは、粉飴だけです。ジェルタイプももちろん使っています。
それに、粉飴は味がものすごくマイルドで、いろいろなものの基本になりますよね。今はアミノ酸補給商品とかいろいろな良いものがあるので、一緒に取れたらいいなと思っていたんです。粉飴の粉タイプを使って自分でつくれば一気に取れます。水分も、粉飴のカロリーも、アミノ酸も取れるわけです。
だから、自分で粉飴と調合していろいろ作っています。そうやって研究する人がいると思いますよ。自転車仲間もみんな研究熱心です。私もいろいろと試しました。ジェルの中にクエン酸を入れたり、コーヒーやハチミツ、健康飲料でもやってみました。
また、低血糖になったときに食べるものを粉飴に変えました。血糖値が一気に上がると疲れやすくなります。すぐに上げたほうがいいのかもしれませんが、あまり上げると、その後、反動でまた落ちるのが面倒です。
血糖値を一番速く上げるのはブドウ糖です。緊急時のファーストチョイスとしては、もちろんそれが正しいのですが、私の場合慣れというか、低血糖になる予兆がわかります。これは低血糖になりそうだなという状態であれば、粉飴くらいのスピードのほうがありがたいんですね。粉飴がないときはお粥のようなものを取っていましたが、それと同じ効果があります。
多種ある自転車競技の中で、飛田さんはどの競技をされていますか。
私はロード一本です。「サイクルクラブ3UP」というチームに所属していて、安陪さんとはチームメイトです。地元飯能に「サイクルハウスMIKAMI」という店があり、そこでロード、マウンテンバイク、シクロクロス等を扱っている中でのクラブチームです。ロードでレースをやっているのは私と安陪さんの二人が中心なのですが、マウンテンバイクに主に力を入れていて、そっちの世界では相当上の人がたくさんいます。
もともと、高校のときは剣道をやっていたのですが、ケガをしてスポーツ全般できなくなってしまいました。その後、就職が決まった後に、たまたま時間が出来て始めてみたのが自転車です。どちらかと言えばスポーツがずっと苦手だったのですが、自転車は乗っているだけでも楽しくて、できるという感覚があったのが嬉しくなってここまで続けてきました。
ロードは、簡単に言うとヨーイドンでスタートしていかにゴールに早く着くかという競技です。レースには体系があって、ロードレース、エンデューロ(耐久)レース、ヒルクライムなどがあります。年齢分けはもちろんありますけど、あとは実力で自己申告ですね。
私はロードレースとエンデューロに出ています。ヒルクライムは苦手なのですが、遊びで友人と一緒に出ることはあります。ヒルクライムは安全なので、登るだけならほとんど転びません。友だちや妻と一緒に遊びで出るときはヒルクライムです。
今年はどんなレースに出場ましたか。
最近出たのは、「ツール・ド・かつらお」という3ステージで競うレースです。33キロの短い平地系コース主体のレースでした。そのレースでは第2・3ステージで連勝し、総合優勝して新聞に載りました。スプリントは得意なんです。第3ステージではゴールの400メートル手前でスプリントしました。普通は200〜150メートルくらいで、我々日本人が全速で保つ距離はそれくらいなんです。意表を突いてそれより長めにスプリントしたことが勝利に繋がりました。
1カ月前には「ツール・ド・宮古島」がありました。今回は島を2周する136キロのレースで、先頭集団にギリギリ残れなくて7位でした。年代別では優勝して、一応メダルはもらえました。
「ツール・ド・おきなわ」も、毎年市民レースの140キロで出ています。「ツール・ド・おきなわ」はダントツで大きい大会です。獲得標高がかなりあるので上りの力が必要ですし、上りだけでもだめで、マネジメント含めすべての力が試されます。だから、勝てばもっともステータスが高い大会です。私は、おととしの10位が最高でした。今年は出場するかどうか少し迷っています。
「ツール・ド・北海道」にも出ようと思っていて、総合優勝を狙っています。北海道は年によってコースが変わります。旭川や帯広だったり、ニセコだったり、そういう風に回っていくので何キロとは言えないのですが、価値のあるレースです。沖縄同様に北海道でもプロのレースがあり、市民レースでもそれとほぼ同じコースを走ります。2014年の市民レースではステージ優勝をしました。
自転車競技では栄養補給をどのようにしていますか。
これは自転車競技の勝負の綾だと思うのですが、食事を取るときはピンチでありチャンスであるわけです。食べているときにアタックをかけられたら、咄嗟にはついて行けません。実際に宮古島のレースでそれがあったんです。レース中盤、集団からアタックがかかり、私も含め数人が抜けだしました。結局この動きが優勝争いをする勝ち逃げに繋がるのですが、そのアタックがかかった瞬間というのは、ある優勝候補の方が何かを食べている時でした。私はそれが視界に入っていた事もあり、このアタックに乗ればチャンスだと判断した訳です。後に聞いたところによれば、その方は後半に我々を追いかける羽目になり、かなり消耗したようです。
だから、食事をするタイミングは非常に大事です。私はそういうことがあるだろうと思って、2本のボトルのうち片一方は水で片一方は粉飴を溶かしたスポーツドリンクで、その時間帯はずっとそれだけでやっていました。そういうことがあるので、溶かしておくことはすごく有効なんです。
レースの最後の勝負所ではカフェイン剤を取ります。それまで、レース前にはカフェイン断ちをします。カフェインはドーピングにならない興奮剤ですが、常飲していると効きが悪くなるので、その効果を最大限にするためにカフェインを断っておくんです。カフェイン剤が効き出すには30分くらいかかるので、勝負ところのだいたい30分前に飲んでいます。
練習やレースでは、粉飴をどのようにお使いになっていますか。
粉飴を使う量は距離によって変わります。最近出た「ツール・ド・かつらお」の場合は、粉飴ジェルは取らずに水の中に入れました。33キロなので要らないくらいなのですが、水を飲むときに多少甘みが欲しかったりするので、持っていた粉飴を入れて飲みました。
「ツール・ド・おきなわ」のようなロングレースになると、どうしても必要になります。周りの人が飲み出すのが目についたら、飲んだり食べたりするようにしています。タイミングを時間では管理していないので、そのときのフィーリングですね。140キロでだいたい粉飴ジェルを4本くらいです。水の中にも2本くらい入れているので、合計6本分くらい取っています。600キロカロリーくらいなので、そんなに多くはないですね。
練習のときは休む時間があるので、その時間に普通に羊羹を食べたりしています。ですから、粉飴はレースのときに使う感じですね。私の場合、距離で考えています。60〜80キロくらいのレースだったら取らなくてもいけるという頭があって、さらにそれを越えていくために補給するような感覚です。レースの展開にもよっていろいろ違いますしね。
普段はどのような練習をされていますか。
少ない方だと思いますが、毎朝晩、自宅でローラー台を30分やるだけです。水曜日の朝は飯能近辺の朝練があって、5時集合で、1時間ほど峠3つと平地のスプリントポイントのようなことをやっています。そういった模擬レースのような練習会が毎週あります。休みの日は、埼玉県の強い人が集まってくる練習会に行きます。
自転車競技の魅力は何でしょうか。
レースは特別です。何というか、私は自転車が楽しいということに加えて、勝負の駆け引きが好きなんです。戦っているときのバチバチしている感じがすごく好きです。どうやったら勝てるのかということを考えて、考えて、考え抜きます。けっこう頭脳戦なんです。競っているときに話もするし、相手の虚を突こうとします。私も大ベテランになってきたので、いろいろします(笑)。
目標を持って運動をされることで、糖尿病とのバランスを上手に取っている飛田さんのお話に、多くの方が勇気をもらえたことと思います。ありがとうございました。
インタビュー:サイクリスト安陪 正道 様
2018年 | ツールドかつらお 年代別優勝 |
2017年 | JCRC 修善寺B 5位 |
2011年 | 秩父宮杯自転車競技大会市民B2位 |
シクロクロス | |
2018年 | 千葉シクロクロスCM1 4位 |
2017年 | 前橋シクロクロスCM1 4位 |
2016年 | 信州シクロクロスCM1 3位 |
2015年 | 茨城シクロクロスCM1 2位 |
自転車競技にもいろいろありますが、安陪さんはどの種目に参加されていますか。
僕はシクロクロスとロードレースをやっています。今47歳ですが、自転車競技は23歳で始めました。マウンテンバイクで競技に入って以来、ロングもショートも何でもやってきました。
シクロクロスは公園や砂浜のようなところを会場にしてコースを作り、決められた時間の中で何周できるかを競います。ヨーロッパでは盛んなレースです。カテゴリーが1・2・3・4と分かれていて、エイジで40歳以上がCM1・CM2・CM3と分かれています。競技時間が短く、僕のいるCM1というマスタークラスで40分、一番上のクラスのカテゴリー1でも60分です。
ロードレースには短いものも長いものもあります。たとえば、ロードレースにクリテリウムという競技があります。クリテリウムは公園や狭い街中を何周もするレースで、競技時間はだいたい1時間以内です。本場ヨーロッパではロードレースはだいたいロングです。しかし、日本の場合は100キロ以下の短いレースが多いですね。ロングレースはあまりないのですが、有名なのは「ツール・ド・おきなわ」というレースです。プロのコンチネンタルチームが出るレースと市民レースがあります。サイクリングイベントも同時にやっているので、市民レースの甲子園と言われるくらい参加人数が多いものです。あとはニセコも有名ですね。ロードレースにも一応枠組みはあるのですが、エイジの枠はレースによって設定していないものもあります。
僕は、レース数ではシクロクロスに多く出ています。カテゴリーレースは年間のポイント制になっているので、レース数を出ないとそのカテゴリーに残れないのです。トライアスロンのように一発レースで順位云々というより、あちこち転戦していく感じです。関西は関西で毎週のようにレースがあり、関東は関東で毎週のようにレースがあります。僕も、冬の間は月に2回くらいレースに出ています。ロードレースでは月に1回くらいどこかのレースに出ます。今週も福島県の「ツール・ド・かつらお」に出場する予定です。
普段はどのような練習をされていますか。チームには所属されているのでしょうか。
地元飯能のサイクルクラブ3UPというチームに所属しています。もともと、サイクルショップの店長さんがマウンテンバイクのライダーだったので、一緒に走っていたんです。チームではAttack!299というロングライドイベントを運営しています。国道299号線を飯能市から茅野のほうまで170キロ、獲得標高約3800メートルを登っていくイベントです。参加人数も増えて今では200人以上です。
他にも地元に朝練仲間がいます。各チームからいろいろな人が集まって、1時間くらい近辺の山を走っています。週末はチーム練習に出たり、有志で他のチームの人たちとよく走っています。休みの日に友だちと山に行く場合はだいだい100キロ前後乗ります。朝6時くらいに出て10時には終わるので3時間強くらいですね。山なので1500から2000メートルくらいは上がります。
粉飴はいつからお使いですか。
ロードレースの友だちに1型糖尿病の方がいて、2年ほど前、その方が粉飴をボトルに入れているのを見て知りました。そのときは飲みませんでしたが、1年後くらいにAmazonで見て、これかと思って頼んでみたところ、それがすごく良かったんです。
昔は他社のCCDを使っていて、それもたしかに良かったのですが、エネルギーが足りませんでした。ツール・ド・おきなわの200キロや140キロに出ていたとき、力が出なくなって踏めなくなってしまったことがあります。食べなきゃいけないとわかっていても、胃腸が受けつけなくて全然だめになってしまうんです。ハンガーノックになると目の前が暗くなってきます。そこまでならなくとも、なんとなくフラフラしながら漕いでいる人も多いですね。ハンガーノックと気づかない方もいるようです。
粉飴を取るようになってエネルギー切れがなくなりました。粉飴は100グラムで400〜500キロカロリーが取れます。だから腹持ちがすごく良いんです。飲んでいるとあまりお腹が減らないので、ハンガーノックにならなくなりました。
なぜ糖尿病の方にも粉飴が良いのでしょうか。
僕の友だちに1型糖尿病の方が何人かいるのですが、1型糖尿病罹患者にはアスリートも多いようです。1型糖尿病ではインスリンの量を調整しなければなりません。運動すると血糖値が下がり、低インスリンの状態になります。ロードレースのような比較的激しいスポーツではインスリンが下がりすぎてしまうので、そのときに調整として粉飴を取るのです。通常であれば、食後にはインスリンを打たなければなりません。ただ、その後激しい運動をすることが前提であれば、食後でも打たなくていいのです。逆に足りなくなるので、それを補うために粉飴を取ります。
糖尿病の方は疲労が強いスポーツは避けたほうがいいようなイメージがありますが、逆なんです。特に1型の方は、スポーツをしたほうが血糖値の安定があるそうです。粉飴は腎臓に負担がかからないし、固形物よりカロリー計算がしやすいですよね。甘いものを取ると急激に血糖値が上がってしまいますが、粉飴はマルトデキストリンなので急激に上がりません。そうしたことを踏まえて、友人は粉飴を飲んでいたようです。
粉飴をお使いになってみて、どんなところが良いと思われますか。
ロングで乗るときに粉飴は最高です。ロングライドイベントもたくさんありますし、自転車に乗る方は練習でも長く乗ります。僕もこの間、秩父の標高3600くらいの山を170キロほど乗ってきました。皆さんは補給食を食べていましたが、僕は粉飴ボトルだけでほとんど大丈夫でした。やっぱりお腹が空かないというのは良いですね。
僕は痩せ型でもともと食も太くありません。アスリートはガンガン食べられる人のほうが強いのですが、僕はあまり胃腸が強くないので、ロングライドイベントの後半、特に暑い日などは食べられなくなってしまっていたんです。ですから、胃腸に負担がかからないという意味でも粉飴を使っています。使ってみて、胃腸での吸収の良さと優しさを実感しています。胃腸が弱いアスリートにも粉飴は良いのではないでしょうか。
高強度のシクロクロスや、ロードレースでもクリテリウムのように短い距離では2時間前に食べなさいと言われていますが、固形物を食べるとなんとなくお腹に残るような感じがあります。時間があるときはいいのですが、時間がないとき、特に短いレースでは粉飴のほうが良いと思いますね。
粉飴は朝練でも重宝しています。短い時間で強度を上げるような朝練をしているのですが、朝は起き抜けで食べられません。今までは、1時間の練習でも後半になってくると力が出なくなってしまうことがあったのですが、粉飴を取るようになってそれがなくなりました。
具体的に栄養補給はどのようにされていますか。
強度にもよりますが、たとえば山を100キロ走った場合、1500〜2000キロカロリーは減っていると思います。ツール・ド・おきなわの200キロのように激しいレースでは、皆さん5000キロカロリーくらい取っているのではないでしょうか。先ほどお話ししたAttack!299というイベントでは、積算して6000キロカロリーくらいは減っています。
朝の練習では必ず粉飴を使っています。500mlのボトルに粉飴を100グラムくらい入れて水とシェイクするので、400キロカロリーくらいですね。それを水分補給のつもりで飲めば、後半ももちます。1時間ちょっとの練習で平均600〜800くらい減りますが、1時間ガンガン走っても平気です。ですので、1時間の競技でも同様に効果があると思います。半分しか飲めなかったとしても、200キロカロリーは取れているわけですから。今までは後半に踏めなくなってしまうことがあったのですが、それはおそらく前日の夕食が足りなかったり、グリコーゲン不足だったのだということが、粉飴を飲むようになってよくわかりました。
ロングライドイベントでは粉飴にクエン酸を入れるのも良いですね。クエン酸を入れると酸っぱくなりますが、疲労回復には良いようで後半もリフレッシュできました。
自転車競技の良さはどの辺にあるのでしょうか。
シクロクロスやロードレース、マウンテンバイク、トラック競技といった競技のほかにも、ロングライドイベントやヒルクライムレース、ブルベなどもあり、自転車の世界は非常に奥深いものです。また、競技とは関係なく、走ることを楽しんでいるサイクリストも数多くいます。
自転車競技では、40代でも良いパフォーマンスを出すことができます。脚力だけではないのです。そこが面白いですね。20代であろうが40代であろうが、戦略面での蓄積がものをいいますし、道具によっても左右されます。僕はシクロクロスバイク2台、ロードバイク2台、マウンテンバイク1台で計5台持っています。天気や路面などコンディションによってホイールを変えるので、フレームは1つでもタイヤ、ホイールが多く必要です。ギアも変えます。僕は家を作る時点で自転車部屋を作りました(笑)。